無題
由比良 倖

右に行けば心臓が
左には肺の痛みがある
今朝死損なった声帯の
(母子が)
妙に
かゆい

欠けた大空の脳漿が
明るく青く漏れて来て
折れた魚がとってもイギリス訛りで
紺碧の根を枯らすように自閉し

僕は放火する指先を切り落とした

      *
先生から逃げるには酸素が足りず
給食をアップル社製にしたのは誰ですか
箱詰めの夢にパウダーを付けて
乾いた野菜に苦い口づけをしましょう

金庫に閉じ込めて
箱男タクシー
楽屋に連れてって


五重の塔には
衛星が降るよ

傷だらけの天使を前線に立たせて
僕は青いお風呂に侵るよ

明るい影が攻めてきたので
僕は見ていればよかったんだ
赤い人たちがぬかるんだ地面を
生身の水晶体で
そっぽを向いた宇宙から

どこに行くかなんて
うじ虫
みたいな考え

僕の傷口に集結してよみんな
五色の月に腕を放って(自滅シール付)

ごめん
糸を抜いて……


夜になると
蛍光虫が
夢から溢れ出した

ドアの向こうには何もない
何もないなんて
産まれる前からのこと

虫たちとの別離をはかった
瞬間から
感応

し始めていたんだよ

だれが宇宙
飛行士だなんて
分からない——

だから
だから
だから


二時.、草の時間
二百次元目、蟻の時間
undo undo undo

二拍子、脳みそをつぶす
軸の時間、隔絶の時間
秋の時間、広い時間

長い時間
名付け親だったあなた
四画、顔面

僕は離れていく


自由詩 無題 Copyright 由比良 倖 2023-10-04 10:34:31
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