旅立ちの詩
ミナト 螢

病院が白いということ
全ての記憶に
カルテのような
置き場があること

始まる命と終わる命が
手を振りながら
点滴よりも静かに
空を見上げてしまう

誰かいないか
何か聴こえるか

パタパタと響く
スリッパの音が
賑やかで嬉しい

こうやって
ただ耳を澄ますだけで
三日月の先が
細くなるようだ

昨日より歩いたら
違う景色が見えた

そんな小さなものは
多分レントゲンには映らない

自分だけの光を
弱々しい体に巻いて
ベッドの灯りを消した

それでもまだ
目を閉じるには
早過ぎる


自由詩 旅立ちの詩 Copyright ミナト 螢 2023-09-17 21:32:06
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