箒星
リリー



 讃えられるべきものが青春であるならば

 それは軌道をめぐって来る
 氷と塵の微小天体の様なものかもしれない

 海が のどかに凪いでしまわない内に
 美しい夢も
 ほっぺたゆるむスウィーツの甘みもぬぐい去り
 鋭く 激しく鳴る一本の鉄線になりたかった

 つんつんと あらゆるものに向かって反抗し
 荒れていた季節に自分の姿見失って

 長く劇しい感情を忘れゆき冬の夜空見あげて
 私は自分を偽った

 銀杏の若芽を指さしても
 山の姿を指さしても
 ちっとも目を輝かさない少年に
 「そんな時期はすぐすぎるのよ。だから美しい。」
 と 解ったような口をきいた

 私に失われた 稚さへのかすかな
 ねたみ

 背高い少年の面影に
 小さく 私の姿が箒星のダストテイルに広がって
 消え失せ
 やがて和んでゆく時のおとずれる

 青春って良いものなのだろうか



自由詩 箒星 Copyright リリー 2023-09-12 10:36:24
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