沈黙
由比良 倖

この瞬間、詩になれたら、それだけでいい。

詩は沈黙であって欲しい。

世界が沈黙に包まれたなら。
僕の人生と死は、この瞬間から始まるのだから。
この瞬間だけは、全ては無音であって欲しい。

真っ白な病院の屋上で、真っ赤なギターを弾いていた。
たどたどしく、それ以外は何にも無く。

僕の心は飛翔していた、羽は壊れた。
僕はもう、人生に忘れられてしまった。

僕は廃屋。
値段も付かず、宇宙の端で朽ちていく。

8月の音に耳を澄ませる。
詩になればいい。

世界から入れ知恵された脳にはもう、
どうかお休み、と。


自由詩 沈黙 Copyright 由比良 倖 2023-08-12 09:21:36
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