帝王学
うみこ




僕なんてもう

終わった人だろう

何を今更

めくじらを立てて

昔みたいに

話そうだなんて

いつも以上に

震える想いで

居直ったまま

俯いたのは

僕が一番

憧れた人だった



疑うことも

繕うことも

目の前では

出来なかったことが

今際の際の

あなたとなら

出来る不思議を

今おもいしる



ありがとうと

たったひとこと

言える勇気は

どこへいったのか



あなたからは

教わらなかったから

ずっと迷子で

いつづけたのに



安らぎつつも

抗うような様子を

長い月日のすえに見つめながら



いずれ誰もに

不平等に

訪れることに

引き裂かれて



思い出すときはただ

握りしめた力の中、



比例して迫り来る

おもいでの

かけらたち



いつまでで

どこからだったかわからずとも私たちは



あなたのことが

大好きだった



この世界の

どこを見渡しても

隅から隅まで

叶え知り尽くしても

奪い忘れ去ってもなおひたすらにひとりきりのわたしの父へ


かぜのように告げた皮の厚い手のひらをもつ私の父へ








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自由詩 帝王学 Copyright うみこ 2023-06-03 06:26:27
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