エンドロール
うめバア


3月のロイホで
あなたを心配しながら待っている

30年前から、横断歩道を渡り
チェックのダッフルコートで
歩いてくるクラスメイトは
ああ、息子さん?なの?本当に
大学生いやもう社会人
そうなのすごいね早いね、いや驚いたね

本人にしか見えないよ
砂ぼこりのなかを
少し、戸惑うように歩いてる
あの感じがねとは
言わないまま

デジタル技術って時の流れを感じさせない
彼女が国道沿い、カセットで聞いてたあの歌は
Apple musicで、どうよこれと上がってる
年齢や好みに合わせた巧妙なセレクションが
かえって配慮に欠けてるよなと
うらめしく思う
それでも
聞いちゃうんだよ
真夜中に
ベストテープ作るほどの熱意がなくても
プレイリストできちゃうんだもんね

サンデーズサンで
またいつもの食べよう
そんで仕事の話しよう

多分、今日あたり
ブロードウェイのクラシックカフェに行くから
原稿見せてよ
まだ間に合いそう
ああ来週、え、そんな早いの?

車出すから、中山道いって、浦和まで
いいって大丈夫 て、え、マジで
校了あけですもん

早かった、私たちは迷って、走って、苦しんで
ずっとずっと、辛かった
やめられない煙草に
心療内科
また3丁目にいるよ、猫拾ったんだってさ

若い人はいいね、きれいだね、楽しそうだね、未来があって
馬鹿野郎
同じセリフを、言うもんかと思ってたのに
あの子の息子ったら、いいねえ、若いって

それにしても
約束を守れなかったこと
まだ怒ってるか

さてそろそろ
LINE来てるし、行こうかな
今日の夜何にしようか

雨が降り出して
音楽は、JAZZに変わる


自由詩 エンドロール Copyright うめバア 2023-03-27 00:47:09
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