帰路 〜ズッキーニ座流星群のあった日〜

ズッキーニ座流星群は今夜がピークだよ♪
そう言いながら目の前を横切る鰊を
とりあえず一撫でして歩き出す
何時がオススメだとか、方角はどっちだとか?
……ッどおぉぉぅでもいいよ。

空は
アセトアルデヒドでひたひたのビスケットに覆われているから

これまでの人生でつかまえ損ねた星たちを想う
錆び臭い、表紙だけが立派なアルバムを
めくったところで星に託したい願いなんて思いつかなくて
――期待しないから落胆することもできやしない。


そもそも昨夜のニュース番組のお天気お姉さんの話によるとズッキーニ座流星群はズッキーニ座の向こう側で作られたポップコーンの一部がズッキーニ座を越え地球まで飛んできて燃え墜ちたものだから厳密にいうと流星群ではないらしいし、その説明の裏ではズッキーニ座のモデルになったズッキーニは緑色と黄色のどちらなのか議論していた。つまりこの世界線は差別やムダな争いと共依存の関係にあるのだろう。現にそうあらねばならないとでもいうようにバカっぽい人が他人をバカだバカだと声高に貶すのが聞こえてきて、


私は
手のひらにカピついた鱗を爪でこそげるのに夢中な人になった
――お前らのレゾンデートルは何だ。

それから鱗をすっかり向かい風に預け
それっきり
――私の魂が未だ飛べないのは生臭いからに違いない。

この日はそれっきり振り返らなかった。


自由詩 帰路 〜ズッキーニ座流星群のあった日〜 Copyright  2022-10-19 23:06:17
notebook Home 戻る  過去 未来