ハーレスケイドでの戦い(八)
おぼろん

ざざん! という衝撃波が、一行を再度襲った。
アイソニアの騎士は、依然としてエビ・グレイムの体に取りついている。
ヨランは、「ちっ」と舌打ちする。この盗賊がその心をかいま見せることなど、
滅多にないことだった。だが、今は単なる知識のみでは対処できない事象が、

彼らに対峙している。(脳筋の騎士様。どうか今は、持ちこたえてくださいませ!)
ヨランは、心のなかで祈った。そして、何か策はないのか? と思い巡らす。
そして、オーマルのほうに目をやった。今は、彼女ですら敵ではないのか?
──と、焦った想念が千の思いをヨランに感じさせる。

「これしかないのか? 『リッチ・アルゲヒオ!』」ヨランは、
手に持っていた写本の一ページを破いて、天へと放った。
それは、「災いなる者に災厄をもたらす」という、破壊呪文だった。

ヨランは、この呪文を行使するか否かについて、迷った。なぜなら、彼ヨランは、
世界から見れば悪なる存在だったからである。だが、今は己を無にしてでも、という
自恃が彼の心を貫いていた。そして、天地は割れ、エビ・グレイムの百の目に光が降り注ぐ。


自由詩 ハーレスケイドでの戦い(八) Copyright おぼろん 2022-09-12 20:09:51
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