ペーパービュー
末下りょう


キヨスクに並べられたペーパーの24面で指を切った朝 あなたのささやかな預言を祝福するように 雪が舞う


いくつもの花束を包んだ
ニューヨークタイムズ
ニューヨークヘラルド
マンチェスターガーディアン
ベイツ
シカゴトリビューン
ル モンド
人民日報
デア シュピーゲル
ハンデルスブラット
労働新聞
朝日

シンクレア デッドスピン 沖の水鳥がその黒く光る胸毛を優雅につくろうように
テレサが赤旗をひろげる
テレサなら


false flag operation
海沿いを走る街宣車
耳元の遠い戦争とそれらの声量について語り合った夜のビスケットの 散らばる粉を タオルケットの温もりに残して
テーブルに置いた短編と観念
飾り窓地区での口論と 破れたカーテン
道端のオルタナティブ ライト
ファシスティック リベラリズム
フルブライト レフト
懐のネポティズム
歴史のリバース エンジニアリングと情報のジェネリック
小さなコインランドリーの漂白剤とエスニック クレンジング


早朝のミカ ブルゼジンスキから深夜のタッカー カールソンまでの 街を染めるチャイナ ホワイト


闇は構造もなく、表面積もなく、わたしとの間に距離もない純粋な消去だと

それなりの個性はただ普遍性を前提にしていて

偶然に耐えきれずに宿命が生まれるトレーラーハウス 偶然を裏返せば物語が書かれているとめどない出逢い

とめどない別れが内面化されたとき わたしに生じた宿命に知覚など一度も存在しなかった


誰かに正義を委ねたくて 正義は政治用語でしか有り得ない街の あなたの透き通った微笑み

明日を生きる者は今日を生きる者に殺される


赦したいと思ったときにはもう赦している

何故なら あなたとわたしが傷口なのだから


街の上の物語は起こらなかったとしても真実で 言葉は通じても話は通じなくても 街の上のリアルは発見されずに創造されて ここに来たなら 居たなら 必ずまた帰れると 肉体が生存の用を超えていても わたしは一つのアイディアであり

いつから明日のわたしは今日のわたしよりあたらしくなくなったのだろう


わたしたちのからだはものがたりなのに

忘れられない笑いがある
フィナーレ
一緒に見たウォルフィン
スケルピョン
アルコルとミザール


クロックアップ
世界の端、至って眺めは、鮮明で
痙攣的、さもなくば存在しない

あの晩、なぜ犬は吠えなかったのか
ベランダで花に水を蒔くように
あの晩



ラップトップに凍りついたワンフレーズが 街の静けさを理解したがっている
今晩も

そんなぼくはあなたの感動にいつもだいたい感動している





自由詩 ペーパービュー Copyright 末下りょう 2022-03-11 15:09:43
notebook Home 戻る  過去 未来