あこがれ
末下りょう

満ち足りた空虚、真空が同時に充満でもあるという逆説 ─



めくるめく露出した壊れやすい肌をめぐりゆく眼差し 二つの柔らかな暗礁のあわいが引き起こす動揺と
同時に
爪先に打ち寄せることのない波の冷たさが示す
一つばかりの疑問

ぼくはきみの身体の外側には入れない


けれども入れないことを口実に
もっと上手く大切にしたい そうやって毎晩ぼくは童貞になり 包茎であり 一枚また一枚と 皮をむかれながら
内側に出てゆく

濡れた女王とO女と幼女の分離と繁殖に他ならないひと


取り澄ましているかのような空虚さの全域で惜しみなく崩れる器から発散する錯乱のなかに弱さを行き渡らせ一つの付随意の中心から輪郭を拡げてゆき重心らしきものを移動させながら繰り返し非生産的に新たな儚さを羽織り弾力のある生産の先端の周縁で伸張する仮足のような襞が適当な獲物を食胞のような穴のなかの穴から消化するその自在な軽薄さがまれに破れ垂れさがる空白を滑るようにいくつかの装飾的な線が丸まりながら転がりでる遠くを見据える瞼のようにうっすらと破れた隙間を覗くすべてはその内部にあるか或いは全く習慣的な水性の排泄物としてあるかでしかなくすべての色彩はその下で羽をたたみ秩序だけが書き溜められてゆく 


心地よさから出る支度を済ませるまえに

熱い放尿を浴びせかけるように
夜の噴水から散らばる帯の 、
炎の水源が

夢で眠るぼくの肋骨を洗い 通り過ぎてゆく


暗がりで世界の形になるものを

開き閉ざされながら
押され
来る

精密な瞳と透明な舌の祈りを

鮮明な花びらに浸して しまい 
額の下層に
激しく
沈む 胞子を
すくい

真空に滲み  、
そこから溢れる指をランダムにめぐり逢わせ 流れ込む吐息の
格子をすり抜けて
夜風の袖を
掴む

いとも軽々しく しなかやに スペース タイム 光  脂肪のざわめき 腐りゆく肉 言語的マスタリーの超越 硬質な無意味をもて余す 音の 波うつ微少の亀裂のような


微笑みが欲しくて




自由詩 あこがれ Copyright 末下りょう 2022-03-02 15:50:15
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