漁り火
ひだかたけし

海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている

降り始める雨
降り始める雨
にびいろを打ち
にびいろに渦巻き

 (今頃何処かの街角で
 産まれ落ちる子の声は
 寂しく独り木霊して
 母の後ろ背を追いかけて)


海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている

 (一つの場所を得て
 一つの場所を失い
 そうして時はのっぺりと
 行き交う人々を呑み込んで)

海はにびいろ
雨の匂い
忘却された団欒が
遠い漁り火に
燃えている
















自由詩 漁り火 Copyright ひだかたけし 2021-12-07 19:19:03
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