白い砂漠
草野大悟2

白い砂漠に
矢のような光が突き刺さる朝
摂氏五十度の砂嵐に
ラクダが弱音を吐く

そのころ
私たちの小さな家では
つば広の白い帽子を右手で押さえ
吹きあれる海を見ながら
女が
あのころをさがしている

どれだけさがしても
海は大波をかえすだけで
あのころを連れてはこないと知った夏
女は風になって
鈍色の空へと飛び立っていった

白い砂漠に夕暮れが訪れるころ
私たちは最果ての食事をとる
突然現れたフェネックキツネが
砂漠主義を主張して
私たちの未来を語ってみせたりする

夕暮れが笑う空では
女の白い帽子が
虹色の潮を吹きながら
雲と遊んでいる

屋根のないテントで
星空を仰ぎながら眠る砂漠には
人を幸せにする魔法が
確かに、ある


自由詩 白い砂漠 Copyright 草野大悟2 2021-11-19 12:14:38
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