風の折れる音
草野大悟2

風を食べていた鳥は
夢を食べはじめるようになってから ずっと
腹をすかせ
風は
その鳥を食べたせいで
空を吹けずに
地を這うようになった

たくさんの綻びた男たちと
肌をあわあせてきたは石竜子(とかげ)は
収納ケースの中から
ほつれた糸をもてあましている男を選びだし
雑巾にして
零れたミルクを一度だけ拭き
涼しい顔をして
ゴミ箱に捨てる

空いろの紅娘(てんとうむし)は もう
ひまわりを乗せることができずに
ぽつん、と埃をかぶっている
                 
それぞれの挽歌が
それぞれの殻をつけたまま
海の中をただよい
とおく
はるか
とおく
青空のかなたから
ポキン、と
風の折れる音がする        


自由詩 風の折れる音 Copyright 草野大悟2 2021-11-10 12:01:21
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