アンテ


吸いこんだ空気
に含まれた
酸素をひとつのこらず
わたしの体は
吸収しているんだと信じてた
全身の二酸化炭素を
呼吸するたび
すべて酸素と置きかえるのが
生きている証拠だって

飲み干した
コップの水
が体内をめぐって
めぐって
一滴のこらず
体の外へ出てしまうまで
どれくらいの時間がかかるのだろう
そんな想像を
するのが好きだった
全部
おしっこになるんだよ
なんて
単純ならいいのにね
水が体内をどんな風にめぐっているのか
知らなくても生きていけるし
どの水滴が
いつ飲んだ水かなんて
どうせだれにも確かめられないし

どの瞬間
どんな状態の
自分が
ほんとうの自分なんだろう
それ以外の時は
わたしはだれなんだろう

吸った息と
吐いた息は
断固としてちがう
のに
どうして両方空気なの
みんな
困った顔をした
難しいこと
考えるんだね
笑い声が途絶えて

ゆっくりと
息を吸う
わたしのなかに入ってくる
いろいろな出来事
わたしのなかからあふれ出す
言葉や気持ち
人ひとりずつは
生まれて
いつか死んでしまうけれど
人間は
人類という現象は
まだ死んだことがない

わたしはだれ
ゆっくりと息を吐く

体内に入った酸素は
どれくらい時間をかけて
外へ出ていくのだろう

どれくらい時間をかけて
外へ出ていくのだろう
わたしという
現象は




自由詩Copyright アンテ 2005-04-26 23:16:21
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