脱皮
妻咲邦香
何処かに捨てて来たような気がして
そんなもの最初からなかったような気がして
そうして、捨てられたのは私の方かもしれないと思い
また会えたらいいなと思う
横断歩道が今日も踏まれて意味を強くする
何を誓えばいいのか?
私には風さえ重過ぎる
未来に向かえばいいのか?
時が水際で道を失う
目覚めないことは諦めること
届かない声で安心して、守った気になって
それでも自販機は
ガシャンと鳴らした分だけ地球を回す
まだ透明な自尊心が何も学ばないうちに
纏った花弁が地面に帰ろうとする
1枚、また1枚
呼ばれてる、呼んでいる
きらびやかな包装紙が剥がされ
一歩、また一歩
時限爆弾へと近付いていく
すぐに世界は表皮だけが降り積もり
足元さえ覚束ず
遭難し、生き埋めとなり、誰もが行方知れず
いつかこの肉体が飛び散っても
チョコレートは舌の上
甘さだけが残り、もはや光沢を必要としない
そうして、また会えたらいいなと思う
また私を選んでくれたら
と思う