培養
さき

例えば

夜中の2時にふと目を覚ます

まだあなたはこの世の片隅で
私と同じように
キラキラ光る端子を避けて
隙間の安寧に息を潜めている

例えば

あの時すれ違った夢の中

この世のものとは思えない
美しいものを見た記憶があるが
この世のものではない故に
現実世界には持ち込めない

私たちは
歳をとる

涙を流すか
時を止めるか
詩人は死んでしまった
そして毎日
それ以外の何かが
私の細胞を食らっては
生き返らせている
霞を食っては生きていけない
逆らうばかりが強さでもない

あの時
感じた痛みが感じられない
私はもう
死んでしまった

あの時
幸せのあまり空を飛んだ
私ももう
死んでしまった







自由詩 培養 Copyright さき 2021-03-23 22:44:54
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