上野公園の花
番田 

今日は午後の川原の道を歩いていたのだ。でも、空の向こう側にいる、かつての自分の思いを確かめるようにして。僕はファミマで買ったコーヒーを手にしながら、今の、僕ではなかった頃のことを思い出していたのだ。かつてはずかしめを受けていた僕のいたあの日々のことを…。新入社員だった頃の僕は、僕の先輩たちと上野公園で花見をしていたのだ。人だかりができていた演歌のコンサートに先輩社員がつきあわされていた時の午後。でも、僕は他の誰のことも置いてすぐに帰った。夜、腕時計を買いに行くと、店員の女性が勧めていた時計のデザイン。そんなものを選ぶ時間も、すぐになくなってしまったかつてのあの頃だ…。そして、今はもう、あの頃帰り道で、誰もが買っていたようなCDを買うようなこともなくなってしまったのだが…。


散文(批評随筆小説等) 上野公園の花 Copyright 番田  2021-03-21 01:50:24
notebook Home 戻る