料理で俳句⑬サルベージ
SDGs

本日のお品書き~サルベージ~


 脛にキズある肉も煮込みけり


 京都駅前に「へんこつ」なる店があって、名物が「サルベージ」。サルベージとは何かというと「大鍋のなべ底を浚ったもの」ということ。で、何を浚渫してくるかというと牛のテールや、骨付き肉、筋、すね肉の煮込み。

 その姿はというと、何十年か前、大洋漁業の遠洋漁船が南太平洋のどこかで見つけた、巨大恐竜のような生き物の死骸の写真があったが、まさに生き写し。あ、死に写しだな。料理というよりも残骸、破れ傘、朽ち果てたボロ家のようなという比喩がぴったり。

 しかし、これがうまい。グルメが昂じると、人が捨てる部分を好んで食べたり、サザエなんかでも身を食べずに肝の先端の青黒い部分だけを齧って、身は海に捨てたり、煮魚は目の下の筋肉だけ食って箸を置く人もいるが、そのような人にとっては垂涎の店かもしれない。

 ただし気を付けなければならないのは店主が店名のとおり「変骨」者であること。いつも機嫌がすこぶる悪い。そして長居が許されない。隣の常連と思われる客は熱燗とサルベージを頼み、ものの五、六分で平らげ、正確に千二百五十円をカウンターに置いて、ぱっと出ていった。発つ鳥後を濁さず。店主がおつりを面倒がるのを避けるためか、きっちり小銭も用意しているのだった。

 しかも時には女人禁制にしたり、会員制にしたり、まことに変わった店で、評判が悪い。その割には人気というのも「へんこつ」の面目躍如。どうです、行きたく(なく)なったでしょ。


俳句 料理で俳句⑬サルベージ Copyright SDGs 2021-03-01 14:48:37
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