ナマ板の鯉
板谷みきょう

病院に勤めて初めての忘年会の
早く終わった二次会で
ほろ酔い気分でヒロミが言った

このまんま帰るのは勿体ないから
どっか面白いトコに行こうぜ

まだ着こなせられない背広姿で
ネオン街を千鳥足で進む
ボクは追うようについてった

飲み屋街を抜けた所で
見付けたピンクの幟には
「入れポン 出しポン ナマ板ショー」

文字に誘われて
ボクら二人で入店したが
ポツポツと居る客は
おじさんばっかり

踊り子さんが出て来て
ステージにかぶりつきの向かい
前列のおじさんが真剣な表情で
玩具のコケシを踊り子の
ソコに挿入している

下手くそっ!
踊り子さんの怒声が飛ぶ

次の踊り子さんが
鼻をグズグズさせながら踊った

いくら
なまめかしい科を作っても
ヤジが飛んでる姿が
痛々しくて
ボクらは
ありったけの拍手を送った

舞台が暗転し

それではお待ちかね
嬢によるナマ板ショーの
時間となりました

アナウンスが流れたけど
誰も舞台に上がる客が
居なかった

すると踊り子さんが
ボクらを指差し舞台に
上がるような仕草をした

ヒロミは
すっかりその気になっていて
ボクは道連れのように
舞台に上がった

持っていた籠から
ティッシュとコンドームを出し
ヒロミの下半身を露わにし
円卓舞台中央に
腰が来るように寝かせて
踊り子さんが跨るように沈めて
腰を振り続けた

済んだ後に使用済みのコンドームを
観客に見せた後
踊り子さんは続いて
断っていたのに
ボクのパンツを下げたのだ

人前で下半身を晒されて
恥かしく縮みあがったままで
ヒロミの時と同じように寝かされた
円卓舞台が回ると
かぶりつきのおじさん達の声が

なんだ、ありゃ。
若いのに
インポじゃねぇのか。

被さっていた踊り子さんに

出来ません。許して下さい。

ボクは呟き続け

黙って。じっとしてなさい。

踊り子さんが耳元で囁いた

挿入も射精もないまま
音楽が流れる間
踊り子さんに抱かれながら
円卓舞台は回り続けていた


自由詩 ナマ板の鯉 Copyright 板谷みきょう 2020-11-07 00:45:32
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