西中の三上さん
板谷みきょう

夕方に
スーパーマーケットの食品売り場で
品定めをしながら
行ったり来たりしていたら

中年女性から、突然
「イタヤ君⁉」と声を掛けられた

吃驚して声も出せず
マジマジと見詰めてると
「あ・た・し。三上。み・か・み。
中学で同じクラスだった三上だよ。
イタヤ君は、変わんないねぇ。」と
話し掛けてきた

しっかりと
買い物籠をぶら下げ
すっかりと
おばちゃんの佇まいだけれども
言われてみれば
何処となく
面影があるような…
無いような…

しかし
確かに同級生には
三上さんは居た

お父さんが西中学校の
用務員をして
剣道をしていた

その三上さんが、どうして
声を掛けて来たのか
戸惑っていると
天井の防犯カメラを指差してから
別の食品棚の方に手招きをする

ついて行くと
「あたし、この店に雇われた
万引きGメンなの。
待機室に不審人物の連絡があって
来てみたらイタヤ君なんだもの
卒業以来だもん。
暫く振りだよねぇ。」

「暫く見てたけど
イタヤ君、挙動不審だよ。
気を付けた方が良いよ。」

そう言うと踵を返すように
去って行ってしまった。

どっかで
おかあちゃんしてるんだろうけど
テレビでしか見たことない
万引きGメンに
かつての友人がなっていたことが
誇らしい様に思えた


自由詩 西中の三上さん Copyright 板谷みきょう 2020-11-06 13:00:18
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