吉川クン
板谷みきょう

果樹園農家の娘だった
浅黒くて小さくて
ボーイッシュな可愛い
女の子だった

お似合いのカップルだと
囃されてたけど
そんな学友の言葉を
満更でもなく
聞き流していたっけ

実際
仲良くしてたけど
付き合っては
いなかった

ある時、学校に
来なかったことがあった
祖母の葬儀で休んだことを
担任の先生が話してくれた

登校して来た時には
仲良しの女友達らが
彼女を囲んで慰めていた

「ホラ。板谷。
お前も慰めに行けや。」と
悪友に勧められ
彼女の席に行って
すっかりと
泣き腫らした両の瞼を
マジマジと見てると
慰めの言葉なんか
全然、浮かんで来なかった

女友達らが
「何か言いなよ。」と
小突いてきて
ボクは、つい
「ぶっさいくな顔だなぁ。」

それから
卒業するまで以前のように
親しくすることは無くなった

暫くしてから
稚内に嫁いだことを聞いた

今更だけど
彼女に会いたくなっている


自由詩 吉川クン Copyright 板谷みきょう 2020-10-23 21:48:07
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