東苗穂にあるケーキショップあかね
板谷みきょう

末娘が10歳の誕生日を迎えた日
7歳上の長女と妻は
誕生日のプレゼントを
用意していた

ボクはと言えば
実は
すっかり誕生日だったことを
忘れていたのだ

ねぇ。お父さんは
何を
“はと”のプレゼントにしたの?

「忘れてた。」とは
言えなかった

それで

「誕生ケーキを選んで貰うことを
お父さんからのお祝いにしようと
思ってるんだよ。」

そう答えて
家から車で30分程の場所にある
美味しいことで有名な
ケーキショップあかねに
末娘を誘い出掛けた

本当は事前に
誕生ケーキを注文してたから
受け取りに行くだけ
だったのだけれども…

店内に入り誕生ケーキを受け取る時に
店員の女性が
「誕生日のお祝いでしたら
蝋燭とプレートをどうしましょう?」
そう聞いてきたので
「幾らです?」と尋ねた
無料だと知ったお父さんのボクは
「今日誕生日なのは、うちの娘なんです。」
と娘を紹介して
挨拶をさせた

「お嬢ちゃんは、幾つになるの?

…そう。
それなら、蝋燭を10本入れておくね。

お父さん。
プレートは、なんて書きましょうか?」

娘の名前は“はと”って言うので
「はとちゃん、お誕生日おめでとう」で
お願いします。

そうお願いしたら
娘が
「お誕生日ありがとう。って
書いて下さい。
家族みんながお祝いしてくれるし
ケーキもお父さんからの
プレゼントだから
だから
ありがとうって書いて下さい。」

女性店員は
「私も今まで、ずっと
この店で誕生ケーキを売ってきましたけど
“おめでとう”じゃなく
“ありがとう”って書くのは初めてです。」

夕食にケーキを箱から出した時に
末娘は大きな声で
「誕生日ありがとう。」と言った

そんな娘も31歳になった


自由詩 東苗穂にあるケーキショップあかね Copyright 板谷みきょう 2020-10-21 23:12:46
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