だれもいない
鳴神夭花

電話の音がしている
誰にも取られない電話の音が
留守電にもならないで
コードも抜かれないで
ただ伝播するものを拾っては鳴いて
何処かのくじらのように

きっと君はいつだって化石になれたんだ

終わってしまったものに固執するのは
失ったものを大切に思っていたと
そう信じ込ませたいからだ
平熱は三十七度で
どうしようもなくブランコを漕ぐ

電話の音が
耳の底から離れない


自由詩 だれもいない Copyright 鳴神夭花 2020-10-11 16:01:31
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