堆積する、あらゆる羽で世界は作られる
千月 話子
堆積する僕らの羽で世界は作られるという話。
リノリウムの床を滑らない上履きの爪先
ゴム製の高音が窓に当たる
スーパーボールの見えない躍動
それが、君らの証しだ。 そして
四十人ほどの混ざり合う体温
教室の四方八方に散らばる
気にかけられない騒々しさは
体の倍もある白い羽の
止められない羽音を隠す 無意識
柔らかい午前の光り見上げる
大きな窓を開け放ち
ムズムズと抜け落ちた羽、羽毛
それは 一斉に舞い上がり
遠く 近くへ。 そして
世界を構築するという層として
堆積する養分の若々しい輝きに
未来はその時代を見つけるのだろう
木目光る床
交差する白い線の模様を
上方から光り差す
埃の渦が照らす
体育館という名の構造物の
心地良い響き
背中の隆起が皮膚の下で
グズグズと動き回るので
跳ねる、走る、笑う、 無意識
抑制した羽の飛んで傷つかないような
天井の丸さが 知らず 優しい
宙に浮かぶ 綿毛 羽毛
鳥の種類など分からないとして
目の前を揺れる擬似催眠で
君らの背中と同調する そして
時折 あらゆる場所で
羽を広げてしまうんだ
感情の起伏が同調して
抑えきれない快感に
羽ばたき 羽を散らすんだ
そして
誰も気付かぬうちに
私らの羽を忍ばせて
世界は密やかに構築されていく
という 話。