死者の戯れ
ただのみきや

影法師

セイタカアワダチソウの囁き
太陽と雲のコラージュ
目隠しする乳房
一瞬で潰れた空き缶の音
湖水に跳ねる金貨 落ちる鳩
鉛筆を齧る数学教師のポケットの
癲癇持ちの日時計
笑い続ける貝 溺死する貝
接吻 白い貝の接吻
倒れて来る鏡に裂かれた向こう

――影踏み遊び
   わたしの影?
    それともあなたの





虚無

灯りを求めて闇をさまようのと
星が見たくて夜出かけるのは違う
知ることの喜びが何に相殺されるか
ずっと後から老いのように知る
迷信深いことが不幸とは限らない
一つの恐れから解放されても
心は別の恐れを自ずと創り出す
憧れ 神秘 謎が全て虚無に帰すなら
迷信や妄想は死んだ幼なじみ
否 それくらいしか逃げ場はない





死人に口なし

階段を降りて蜘蛛の巣を破り
歩道を歩いて蟻を踏みつぶす
天災にも等しい圧倒的な大きさで

何かがわたしの暮らしを破壊して
わたしを死に至らせたのなら
天災か人災かに何の違いがあろう

生者がなにを口論しようと
最早わたしには関係のないことだ





憑いて離れて

暑さが和らいで
今朝風はこの腕をすり抜ける
窓辺で羽虫の骸がふわり舞う

夏はおくを秘めた母
空の彼方に鳴るものはなく
どこからか子供らの気配が覗く

素焼きの娘たちは
どのような釉薬で
夏を永遠の過去にしたのだろう

連綿とした生と死の折り重なり
霊を招き 霊を送る
肌をあらわにした男と女

煙のように縺れて
寝屋に溶け込んだ匂い
祖母が割った瓜の汁

魏志倭人伝に「人性酒を好む」とある
倭人も隼人も熊襲も蝦夷もアイヌもみな日本人となり
相変わらず酒を好む

そして相変わらず
夏 水底は女系
巫女の国がゆらり現れる



                《2020年8月14日》









自由詩 死者の戯れ Copyright ただのみきや 2020-08-14 20:32:27
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