紙巻き煙草のブルース
TAT
アイコスだか電子タバコだか
知らないけれど
子供の玩具じゃあるまいし
ひそひそコソコソ
プラスチックの塊を
吸い上げて
あわれなもんだ
次元大介とか
サンジに
憧れて
煙草を吸い始める奴はいても
電子タバコやアイコスじゃ無理だろ
かくして煙草という
文化の息の根は
じきに止まる訳だ
今必要な連中が全員死んだら
下の世代は吸わねえだろうしな
土砂降りの中
安いビニール傘の中
ダメになりそうな
最期の一本の
紙巻き煙草に
カチカチ
カチカチ
ガチガチ
カチカチ
百円のライターで
火を点けて
点かなくて
小さな炎を両手で
風から守りながら
火を点けて
ジジジと
深く静かに燃えて
肺の中いっぱいに
SMOKEが広がって
怯えも
恐れも
焦りも全て
悪魔みたいに
神様みたいに払拭してくれる
ポパイのホウレンソウみたいな
ロックマンのE缶みたいな
ご機嫌な奴が
オイラの心臓や肺と
刹那的なSEXを始める
SMOKE
その後は
映画やドラマだと
パン!
と拳銃で撃たれるSEが入る場面だ
もしくは
舗道に吸い終えた煙草を棄てて
靴で踏みにじる必要がある
幕を下ろすために
或いは明日を目指すために
この詩を
骨まで愛したウィンストンとケントに
大きく羽根を広げるイーグルと
白亜の城塞に捧ぐ
自由詩
紙巻き煙草のブルース
Copyright
TAT
2020-07-18 21:33:38