しゃくやくの妖精
丘白月

夏が少し遅れて
影を踏んでついて来る
僕が一番好きなのは
春だと知って
遠慮しているのなら
シャクヤクの花をあげるよ
どんなに花びらを重ねても
足りない愛を
この花は知っているから

濃くなって行く影が
夏の海のように空のように
深く遠く無限に近づく
花びらの数だけ
愛を覚えているから
毎晩一輪をねだって踊る
いつか妖精が言った
私はこの星の先住民だと
花を用意して待っていたと


自由詩 しゃくやくの妖精 Copyright 丘白月 2020-04-26 08:43:28
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