近くにある星
水宮うみ

星空の光のなかに一つだけ あなたがいるという言い伝え


水面にまぶしい色を描いている ひかりのように季節はわらう

カラスよけに吊るされたCDが月みたいに光っている 朝の空

世界にはたくさん魚がいるけれど うちの金魚が一番可愛い

この指が 地球も星だということを冷たい夜に思い出している

あの頃の 世界を救うことでしか 自分を守れなかった私

寂しいのは背中に羽がないからで、決してきみがいないからじゃない

あの人の後ろ姿を見つめてるきみの可愛さをあいつは知らない

泣いているあなたは凪いでいるように止まってみえた ふっている雨


今はもう閉店した本屋で買った小説だと、読み返して気づく

言葉には光が宿っていることを あなたの本が教えてくれた

世界では実現できないことなので 世界のそとで実現させちゃう

あの過去で僕が流した悲しみに あなたもすこし悲しんでくれた

休日の早朝に降る雪みたいに どこかあたたかい涙がこぼれた

なにもかも終わってしまったあなたとも桜のような会話があった

君のこと大好きだったあの頃に戻れなくたって書き続けるよ

ひとりだけど一人ぼっちじゃないときに 僕から優しい言葉が生まれる

あの夏の空に落とした風船が 宇宙をみあげる理由の一つ


遠くにある光が過去のものならば とっても近くのあなたは未来


短歌 近くにある星 Copyright 水宮うみ 2020-04-26 00:31:24
notebook Home 戻る  過去 未来