木偶の坊
うみ

翅をむしって
ただころがってうごめく虫になりたい
じぶんの体をずたずたに引き裂いて
ざくろみたいなかけらになりたい
そうしたらここからわたしは
自由にとんでゆける
と思う

歯を剥いてわらって
だれかにわたしがわたしですと
言うことがつらい
わたしがだれでなくても
空は青い
わたしがここにいなくても
新発売の口紅は きれい

ちいさくうずくまって
道端のアスファルトに差す
光をあびていてはだめですか
ぼうっと突っ立って
明日も今日もなく
道路をながめていていいですか

雑草がゆれること
鳥が鳴くこと
ひとつひとつを
ことばで飾りたくはない
うみだしたいものが
ひとつもない
この両手
すべてを手放して
かろいあしどり、で

わたしがわたしの重さに
耐えるあいだに
あなたは駅へ歩いて行く
すずしい顔をして


自由詩 木偶の坊 Copyright うみ 2020-03-25 16:21:16
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