浅い春
塔野夏子
浅い春が
私の中に居る
いつからかずっと居る
浅い春は
爛漫の春になることなく
淡い衣のままで
ひんやりとした肌のままで
佇んでいる
(そのはじまりを
浅い と形容されるのは
春の特権でありましょう)
鴇
(
とき
)
色の雨を
あるいは真珠色の日射しを
ながめながら
うっすらと微笑みながら
けれどどこか
うつろな眼差しのままで
かたわらにいつも
菫の花を咲かせて
自由詩
浅い春
Copyright
塔野夏子
2020-03-19 11:26:28
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春のオブジェ