夏狩り
竜門勇気


息を吐く
ただ息を吐く
胸が柔らかな手で
押し込まれていくような
くさった気分

へその奥にある
花崗岩を隠すようにして
僕は生きてきた
忘れ去られないように時々
水面を目指す
このゴツゴツした
不格好な何かをさとられないように
目と耳だけを空気に晒す

息を吐く
ただ息だけを
心はどっかいっちまった
そんな顔をして
ただ息を吐く
肺が空っぽになれば
きっと楽になるさ
あぶくは僕を取り囲んで
またこの水面を遠ざけていく

すべてを受け入れる時
体のどこにも自分を残しちゃいけない
ただ息を吐いて
体中のちからを諦めて
何が奪うのかを見るんだ
そいつが視界から消えるまで
ずっとそうしているんだ
僕はそうしている
そうやって
僕の季節が一つ消えていくのを
みてたんだ


自由詩 夏狩り Copyright 竜門勇気 2020-01-17 10:06:07
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