寂しい空に(聖夜礼賛)
秋葉竹

無数の
真っ白な天使が
堕ちくるころ、想う、

あの夏、あの島で
透明な波の下、泳ぐ
ひとりきりの人魚の微笑みを。


雲の上に
漆黒の、帆船が、飛んでいる、

自由さがす百舌が、
青空を、滑空して、
遠すぎた茶色の過去を棄てる。


時は、僕を追い越してゆくだろう。


波打ちぎわで、
太陽は、あたたかい
オレンジ色の
世界を染める
光を放つ、

その光は、
あの真夜中のロードショーの
エンドロールに流れていた
蒼い字幕のようなせつなさに似て、
人の心をしっとりと濡らす。


世界は、僕を置き去りにするだろう。


その小さな島の牧場で、
優しい孤独につまずいて
倒れた僕を、
純白の牝牛が
涙目で見おろすとき

僕はそのとき、すべての色を忘れ
寂しい空に、
辿りつくことになるのだろう。

そしてそのとき、
真っ白な天使は
乾いた笑い声で笑い、
僕を見つめ、
いっしょに
堕ちてあげると
いってくれるのだろう。





自由詩 寂しい空に(聖夜礼賛) Copyright 秋葉竹 2019-12-24 06:42:19
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