パジャマの残り
ふじりゅう

せんべいをかじって
もぐもぐする音すら部屋を飛び交う
無表情の自室 不意に笑う
それでも憧れの消防士になどなれぬ

思い思いの表情を投げて
あの子に届くよう祈る
羽を生やして 何処へいったの
パジャマの燃えカスで涙を拭く

海を見に行った
川の水を飲んだ
コンビニにたむろしたバイクに怯えた
あぁ 私を恋しくさせてほしい
マッチを心臓で擦って火をつけた

テレビを食べたら寂しくなんかない
他人らしきものを部屋で反射させて
あえて電気を薄暗くした
汚らしいキッチンを洗わない
いつも君の残り香が腸に居るのか、腹痛が酷い
望遠鏡を逆にしても
滲んだ世界は変わらない

星を見た
電柱を見た
蝿の群れのようにバイクが通り過ぎた
いやだ 悲しい感情を沸かせてほしい
貴方のパジャマで火をつけても

海を見に行った 当然誰もいなかった
砂の山を作った 当然誰も見ていない
ハートを描いた 波で消えたからもう一度描いた
転げ回って遊んだ 誰もいなかった
めちゃくちゃ笑った 久方ぶりに笑った
めちゃくちゃ笑った めちゃくちゃ笑ってみた
めちゃくちゃ笑った 笑いあっていた
あはあはあはあは
転げ回っていた 心臓に何か引火した
わかめを体中に貼り付けて 命乞いをして
汚らしい世間が私を逆撫でしてる
滲んだ世界は私に広がる宇宙
私を恋しくさせてください。
いやだ 悲しい感情を沸かせてください。
私をまともということにしておいてください。


自由詩 パジャマの残り Copyright ふじりゅう 2019-06-05 14:24:36
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