終末にはほど遠い平日の

私を綴じる雨の影よ、色褪せないでおくれ
と白衣の数学教諭のお情けの入っていたブリキ缶が匿う
  なんという薄っぺらな人生!
  そう書き添えたら手拭いで蜂を叩き落とし
  生死は確認せずに恭しく水洗便所へ弔う
仄かに捻れた背中に貼りついたひとひらを
せめて
家族以上顔見知り未満の誰かがバカ笑いしてくれたなら
雨樋の理想がカサブランカの底に孤独死せずに済んだのに
  無理な話でしょうな
  毎朝毎晩ひとり仏壇に手を合わせていたというわりに
  西瓜は背を丸めて地味に吐血していましたから
処世術を誤嚥して噎せっかえった蝙蝠傘の
硬くまっすぐな骨は、いったい何処へ往くのか
  生地は祖母の姪の息子の嫁が拐っていきましたし
  持ち手は、確か二年が過ぎる頃に二度焼きされたかしら
  傘の主はゼロ円を蓄えるのが趣味で
  静かに眠る彼を二度目に焼いた方の寺にお布施は……
兎にも角にも
黒から白までの純真を銀行員のように捲りあげ
  一方通行にご協力願いますってね
  かあさまはいつも日本語を左手で捲るけれど
  どうせ、すぐに戻ってくるのだから
  ナビに従うマーカーの用意をお願いします
最初に目があった無彩色の少女に紅をさす
そんな慈しみを以て
切り裂いてよ
背表紙を
盛大に
  裂ける程の厚みがあったならば!
  そう本文よりも大きくならないよう注意して書き添えて
  トタンに滑る蜜を煮詰めて作ったメランコリーを噛み締める午後三時


自由詩 終末にはほど遠い平日の Copyright  2019-04-09 23:26:18
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