チョコレートの春
オイタル
低い電線が空を結ぶ春の通り道
見えない花粉たちのように
子供らは散ってしまって
もう影もない
僕は薄い布団に丸まって
よそよそしく朝を呼吸する
枕元のチョコレートを少しかじって
枕を被って少し泣いて
それからもいちど布団に潜る
近いところを飛行機の爆音が滑る
ずっと地面に近い方で
「いいかげんにしなさい」と
誰かの声
繰り返し誰かの声
僕は何か不満をつぶやいて
それから不安げに窓を開ける
春だ
見えない電線を影が結ぶ空の通り道
子供らのように子供らは薄く息絶えて
もうそれは花粉でさえない
僕の夢のすぐそばを
飛行機の爆音が滑っていく
繰り返し枕を叩いて
繰り返し窓を開いて
チョコレート色の布団のそばを
飛行機の爆音がゆっくり滑っていく