歩く座禅
ゴデル

よく当たるので評判
スクランブル交差点脇
宝くじセンター

鯨に食われる前の
鰯の群れの一匹のよう
僕はセンター目指し
交差点を渡っていた

「ビシー」

左肩に突然
ディープインパクト
棒で叩かれたようだ

見ると
お気に入りのシャツの
その部分は
どぶの底で腐った
苔のようなコアを持つ
ヨーグルト状の白い塊に
汚染されていた

「か、鴉なのか?」

人外のアーティストによる
アクションペインティング!
撃ち抜かれた僕

見上げると奴は
既に撤収していた
良い仕事だね
だけど殺したい

これだけ多くの群衆
今まで笑わせたこと(笑い者にされたこと)
あっただろうか
・・・鰯たちよ呪われてしまえ
なぜ僕なのだ

ビルとビルの間
狭い所
走りこんで泣いた

あさましくも
宝くじなどに
夢を馳せ
意気揚々と歩いていた

これはきっと罰なのだ

天界が
黒い翼をもつものに課した
ドギツイ戒めの
打擲なのだろう

僕は宝くじをあきらめ
その場を去った


(後日談)

数日後
興奮も覚めた僕
もう一つの可能性が
頭に浮かんでいた

「単に運がついたという・・」

検索してみると
くだんのチャンスセンター
十億円の大当たりが出ていた


自由詩 歩く座禅 Copyright ゴデル 2018-11-06 18:33:39
notebook Home 戻る  過去 未来