ひっそりと 過ぎ行く光
むっちゃん

秋晴れの午後 カメラを下げて ぶらりと 初めての下町へ

坂を上がり 狭い路をぐるぐる ようやく辿り着いた 海に近い丘の上

タイムスリップした様な トタン屋根の集落 周囲の家は新しいのだが 

お寺の墓地がやけに高く見える ここだけ 平屋の継ぎ接ぎだらけ 空き地が目立つ

猫がやたらと 歩き回り うるさく鳴いている 飼い主のおばさんが叱っている

土に埋もれたバイクが 野草の中に つる草に絡め取られた 自転車 薄暗い路地

藪蚊がすぐに 襲いかかる ぬかる路に 解体後の瓦がウロコの様に続く 

人影は無いが 息づかいがする家並み こまやかな佇まいに 昭和のかび臭い空気が漂う

幼年期の感傷が ムクムクと湧き上がる カメラを向けても 写らない幻影

秋晴れの空が さらけ出すのを 拒むように窓は閉じ 光を遮る

昔を知る老女が語る 女郎屋が建ち並び 吹き溜まりの過去が有る処 

今は 町歩きのイベントに 時々市民が訪れるとか 

静けさの中 誰もあえて語らず 聴かず 知らされない 歴史の闇へ

私にも 迫りくる陰 追い付かれまいと 歩き回つて やがて闇の彼方へ 静かに暮れ行く





自由詩 ひっそりと 過ぎ行く光 Copyright むっちゃん 2018-10-28 20:06:03
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