入学式
杉菜 晃




これは片野晃司さん制作のソフト
「マウスで作る一兆の詩」
を使わせていただいて出来た、私の詩作です。厳密には私の最初の詩です。
これまで俳句、短歌、掌編小説、童話等、それらしいものは
見よう見まねで作ってきましたが、詩は強烈に難しく
書けないできました。しかし書きたい詩のモチーフは
周辺に多くありました。
この豊かさと、それを表現できない貧しさとのギャップ
は、毎年深まっていったように思います。
書ける人はいともたやすく、自在に日常を詩に昇華させて
いました。私の詩への焦りと苛ちは募っていきました。
そんなとき「マウスで作る一兆の詩」を見つけたのです。
発見したのは二ヶ月も前のことなのですが、使い方を十分理解できないため貧弱な詩になって、ソフトの制作者にご迷惑をおかけしないかと、怖れに怖れ、ともかく投稿の運びとなった次第です。ソフトの制作者にお詫びとお礼を申し上げます。



入学式

不規則な食事を済ませ、朝のテラスから、
君へのメールをしたためている。
君は今日、入学式だったね。
形式ばらない、君のフランス文学への、
放恣な欲求を充足させるための。
そういえば君にならって、ぼくも今日
入学式がある。
ぼくのは詩だ。
長いこと詩に関わりながら、
詩を書けないできたぼくが、
突如目覚めたように、
詩を書いてみようというわけだ。
果たしてどんな詩が生まれてくるのか、
お楽しみ。
この年齡になって、詩を書くなんて
いうものだから、
家族にとってもお楽しみだ。
できれば詩人の君にとっても、
そうであってもらいたいものさ。
粗野で純朴な詩って、
こうやって生まれてくるものなのね。
とでも、君が興味を示してくれる程度の
ポエムになればいいと願っているよ。
ここで一つ頼みがあるのだけれど、
フランスの詩人ボードレールの詩で、
君が一番好きな詩を教えて欲しい。
散文詩「パリの憂鬱」は何度も読んで、
ぼくの詩への開眼はそこにあったともいえるんだけれど、
彼の短い詩は難しくて読めないでいるのさ。
君に言われれば読めるかと思ってね。
 ということで、ぼくの初心者的な上の願いを聞いて欲しい。
二番目の願いは、君の今の詩を読みたいということ。二番目にしたからといって、等級があるわけじゃない。これは新しいもの好きのぼくにとって、これから詩作をするために、ぜひとも刺激として必要なものなのさ。二番目にしたからといって、落差などあるはずもない。かつて教え子だった君に、今は詩の先生になってくれと頼んでいるのだ。
というわけで、ぼくの二つのお願い聞いてよね。



自由詩 入学式 Copyright 杉菜 晃 2018-10-25 09:30:24
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