立見春香

嘘みたいに、雨が降って
天気予報は、当たったのに
それだから、だれも喜ばない
嘘みたいに、雨が降ったから

嘘みたいに降った
雨を
傘で防げきれないように
嘘みたいな彼にもらった
希望で
絶望から逃げおおせるわけがない


あの夜、くったくなく
笑ってくれた彼の
幸せな笑い声をおぼえている

これほど忘れられない、
笑顔も、笑い声も、ないだろう

たえられないとすれば、
あの、初めての部屋でみせてもらった
恐竜の化石の欠片が、
根も葉もない、大嘘だったってことくらい

なぜだろう、
あの夜の、あの恐竜の、あの化石の嘘だけは
いまでも私を苦しめる

それ以外の嘘なんて、もう、どうでもいい








自由詩Copyright 立見春香 2018-10-03 03:38:44
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