さんねんかん
青花みち

3年間同じ臭いを放っているだろうと思われていた汚くて臭い学校のトイレの一つが、ある日突然ジョンレノンみたいな男の人とオノヨーコみたいな女の人によって緑とオレンジに塗り替えられた。こんなボロい校舎にあるトイレなのにずいぶんファンキーな色にするんだな。さすがジョンとヨーコだね。本物の彼らをよく知りもしないくせにみんなで笑っていた。たいして面白くもなかった。

教室にはからだとからだとからだが気持ち悪くなるくらいに蠢いていて、それでいて同じ円からはみ出ることがないから密集したわたしたちはいつだっておぞましかった。緑とオレンジのトイレには誰も入らない。汚くて臭いいつも通りのトイレにばかり文句を言いながら通っている。

楽しかった?それともいやなことばかり?いじめや仲間はずれはなかったけど、誰かの悪口を飴玉みたいに舌で転がしていた毎日はもう昔のことかな。

きみは手足が伸びて背筋がしゃんとして、昔はろくにしてなかった挨拶を大げさなくらいするほどになったけど、他人を舐めくさっていたあんな思春期二度とごめんだねって唾を吐いてるきみの、通勤途中に再生してるプレイリストがあの日のままだってきみは気づいているか。


自由詩 さんねんかん Copyright 青花みち 2018-08-03 12:57:18
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