みずうみ
葉leaf


愛はみずうみ、湖底の起伏をすみずみまで満たすもの。欠落やひび、果てのない深淵さえも無限に満たしていく。魚たちは浅く深く光を伝達し、水草は緑色に微笑んでいる。僕は僕という風景の連なりを君に映写した。君は君という感情の行き先を僕に指定した。
愛はかくれんぼが好きだ。居ることを知りながらわざわざ見つける楽しさ、そのときの笑顔の交わし合いが好きだ。何もかもがみずうみの中に隠れて、僕たちの並んだ足跡に掘り起こされるのを待っている。
みずうみにはいつもさざ波が立っていて、伝導する熱で潤っている。一つの空間を共有した記憶、一つの経験を共有した記憶が、いつまでもさざ波を立て続ける。僕が湖にそっと手を浸すと、君の穏やかな鼓動が伝わってくる。
愛はみずうみ、この地上に落ちてきた大きな水の塊。観念や理想を水の粒子が追い越して、現実の大地の上に隙間なく着地したもの。正しくもなく、美しくもなく、風景はただありのままの人間を描き出す。人間には肌があり、髪があり、仕草があり、とても獣じみている。ここは獣が水を飲むみずうみ。





自由詩 みずうみ Copyright 葉leaf 2018-06-05 02:50:28
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