光沢
ただのみきや

白樺からか
ハンノキムシ
熱で磨いた色味して
降って来た
フロントガラスの向こう
鈍い光を投げ返し

 ひとつ
   ふたつ
     みっつ

涙の粒
星を深く沈めた
夜を湛えて


暗い金属の塊を眩いほどに溶かして
鋳型に注ぐ
名も無く神話を持たない女神が
大気圏へと打ち上げられる

夜がただ夜が紡がれるロザリオのように
星々の瞬きに永遠の微笑みを返しながら

似せられた容姿に纏いつく
祈り――なまぬるい吐瀉物の
合金は泣いた
異なる思考で
劣化の意志の発語のように


 ひとつ
   ふたつ
     みっつ

朴訥に剥がれて落ちて
小さな甲虫たちは
生も死も心地よい朝
記憶を照り返す夜だった




            《光沢:2018年5月23日》









自由詩 光沢 Copyright ただのみきや 2018-05-23 20:50:43
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