ひとり、寂しく、生きていたのに。
秋葉竹



あなたを、待っていました。
とつぜんいなくなるものだから、
街中、狂ったように探しましたよ。
月並みな比喩だけど、
髪の毛振り乱して夜叉の形相で、
眼を真っ赤な涙に染めて、
迷子の幼子がお母さんを探せず泣き喚く必死さで、
逢いたくて逢いたくて逢いたくて、
逢えなければ、もう生きて行く意味がないほど、
あなたに依存してしまって、
たとえ一分一秒でも離れていられない
ひとりよがりでも、
魂の繋がりとか感じでしまって、

ははは。

比喩としては
平凡なだけでして、
あの、
切羽詰まった「逢いたさ」には、
自分の人生の目的さえ持たなかった私の、
愛しいという感情のすべての明るい光を
綺麗さっぱり上書きしてしまうひたむきさが、
たしかにあふれかえっていたのです。

はは。

比喩として平凡ですが、
比喩の意味するところの心は、
決して平凡ではありませんでした。

苛烈な、
希求でした。

イヤ、気球の、
破裂じゃ、なくて。

ハッ!

こうして上手い冗談いえるのも、

うん、
『上手い』ジャパニーズ冗談いえるのも、
あなたが戻って来てくれたからでしょうね。

ああ、
それにしてもそれにしても、
ひとをこれほど、
心にとってもう邪魔になるほど、
好きになるってこうなんだって、
ほんとうに、久しぶりなもんだから、
まいったまいった、まいりましたよ、
ただ、救いもあってね、
もっと若かりし頃に体験してなくて、よかったです。
これ、たぶん、あの頃の私なら、
もう、ちょっと、マジ、ヤバかったって。

でも、ほんとうはよくありません?

あの頃の胸張り裂けんばかりの
感情だだ漏れの
みっともないけれども
切ない真摯な『お慕い』の眼差しなら、
あなたを落とせたかもしれませんから。

で、ふたりして、ハ、メ、ツ、…………

なーんてね?

恋に落下は、『憑き物』ですから。

ヤバ。なら、
若くはないにしても、
憑かれてる今は、
もう、恋に落ちているっていうこと?

(クククッ)とか、

自嘲してずに、自重せねば。

オー、ジャパニーズジョーダン、洒落デスカ?
オシャレニ、オハリマシタネ?

どーこが!

ああ、でも、帰って来てくれて、
ありがとうございます。
もう、ひとりにしないでね?

なーんてね?









自由詩 ひとり、寂しく、生きていたのに。 Copyright 秋葉竹 2018-05-12 20:32:51
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