蛇に飲み込まれて
こたきひろし

その時僕は一匹の蛇だった
その日の昼下がり真夏の太陽がかっと照りつけていた
畑と畑の狭い道には陽炎が立って揺れていた

僕は一匹の蛇だったから地面をはって動かなくてはならない
僕の前世は人間だったのでその移動方法がどうにも我慢ならなかった
僕は厄介な事に蛇のぶんざいでありながらあろうことか
人間の意志と感情に生まれついて支配されていたのだ

人間が絶えず手から放さない向上心が
立って移動したい方向に導いて止まなかった

だからその日その時
蛇である僕は蛇の歴史を勝手に変えてしまった
それは到底許されない行動だったが
畑と畑の間の狭い道 その道端の草むらから
僕は尾っぽに全身全霊の力を傾けた
立って道の横断に挑戦したその時に
ギリギリ車が一台しか通れない道を通りかかった一台の
車のタイヤにひかれて
無残に轢死させられてしまった


自由詩 蛇に飲み込まれて Copyright こたきひろし 2018-05-12 04:12:05
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