五月の。
ヒヤシンス


 悲しみは風と共に去り、苦しみが嵐と共にやって来る。
 ひと時の微睡は幸福だった。
 人の心は無防備で、一輪の花のようだ。
 花弁が一枚ずつ剥がれてゆき、やがては枯れ果てる。

 寂しさを紛らわせるように街に出る。
 群衆の中の孤独は居心地が良い。
 時々自分を見失う。
 街路樹の緑が冷たく笑う。

 私は宙を彷徨っている。
 自分の居場所を探している。
 存在価値を貪るように求めている。

 大いなる矛盾、傲慢。
 自分を認める事から始めなくてはならない。
 ああ、五月の風は思いのほか激しい。


自由詩 五月の。 Copyright ヒヤシンス 2018-05-12 04:01:12
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