鶏と雲雀
オキ

 ○

 煌めく金の声を、地上にばらまいて、
雲雀が青空へ昇って行く。
「あんなに雲雀は、金持ちだったかしら?」
 と見上げていた地上の鶏が言った。
「貧しかったわ」
 と別の鶏が応えた。「あいつの格好を見れば分るわよ。
草原にいて、風に吹かれたときの毛の生え際なんて、
哀れっぽくて見ちゃいられないわ。あの子は
天で囀っているときだけ、輝くのよ。空威張り、
いや空ヒバリ」
「下手な洒落なんか、よしてよ」
 木立の下で砂浴びをしていた若い鶏が言った。
 このとき鶏小屋から、卵を産んだ一羽の雌鶏が、
「コケ、コッコ。コケ、コッコ」
 と鳴き立てながら跳び出して来た。
「こっちのほうが、よっぽど金の卵さ」
 と最初に雲雀の話をはじめた鶏が言った。
「まったくよ、違いないわ」
 と別の鶏が和した。

〈おわり〉

 О


自由詩 鶏と雲雀 Copyright オキ 2018-04-09 15:50:54
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