「ざあだ」(編集後)
よーかん


壁を眺めている

モザイクで模様が描かれている

何の絵なのかわからない

葉脈か

馬のようにも見える

神聖なシンボルではないようだ

もっと古い何かのような気がする

土鍋から湯気があがっている

床の感触が重たい

丸い革靴を履いている

外はガラスが曇っていて見えない

老婆が黒い粉を二さじコップに移す

土鍋からオタマで湯を注いだ。

「ほれ」

老婆がコップを差し出す

「ざぁだ・・・ざぁだ・・・」

マフラーをした老人がたずねる

なんだと訊ねているようだ

「だいじょぶだ。だいじょぶだ。」

コップをさらに差し出す

「ざぁだ・・・」

両手を脇の下にしまい顔を横に振る

「だいじょぶだ。だいじょうぶだ。」

老婆が老人の後頭部を掴む

唇にコップをあて傾けようとする

「にがいど、にがいど」

老人の視線がワタシを捕らえる

顔がクシャリと歪む

笑顔

歯がない

舌の奥に暗闇

「ざあだ・・・」

「インスタントコーヒーだ
 インスタントコーヒーだよジイさん!」

叫びながら目を覚ました

携帯が鳴っている

「ざあだ」



おしまい。






自由詩 「ざあだ」(編集後) Copyright よーかん 2018-04-02 19:44:55
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