真逆の同一
ただのみきや

精神の死と肉体の死のはざまに続く茫漠の荒野で
ぶつ切りにされた人間の断面を見つめていた
どんな言い訳も成り立ちどんな解釈も成り立つ
一枚の写真が辺りすべてを眩暈させる

朝の光に膨らんで破裂する姿の定まらない代物だった
瞳は太陽に飛び込んだ灯火に焦がれる蛾のように
声のない窓が内を外にして静かに燃えている
夏の浜辺に落ちている黒焦げのなにかを府眼して涎が赤い

冷め切る前に宇宙は飲み尽くされるだろう
暗い深淵の面に爪先立ちで踊る湯気のよう
朧な生を紡ぎに紡いで括ってみても
蜘蛛の糸で首を括るようなもの見上げては目を瞑り

欹てて混じり合う絵具のように干渉し合い美しく殺し合う
なのに気がつけば殻を割られたカタツムリか干からびて
無花果の葉一枚の逃れようもない裸の牢獄で
あの女の符号を探している外に内に隠語めいた色香を

救いのない好奇心という自慰は沈み往く小舟の蜃気楼
方角を示しはしない星たちの気まぐれな戯れに
折り畳んだ過去を広げてみれば舞い散る紙吹雪
抜け落ちた記憶ヒラヒラもはや笑うしかないヘラヘラ




                  《真逆の同一:2018年2月24日》








自由詩 真逆の同一 Copyright ただのみきや 2018-02-24 19:02:42
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