思い出の再生
狩心

ああそうだ
もう戻ることはできないだろう
その温かな光に乗って運ばれていく

思い出が美しくフラッシュバックするシャワー
事と事の繋ぎ目の静かな時間
そうだここが最後の場所
しかし君は諦められない
差し込む光の朝の思い出を
書き換えられていく絶望の壁を
手でなぞりながら奥の部屋へと進んだ日々を

マスター
私は何の為にここまで来たのか

遥かな優しい風が戦ぐ海辺の崖
人気の居ない音楽と連続されるフラッシュバック
夕日をバックに抱きしめ合っている母親と娘
目覚めるとベッドのシーツがゆっくりと皺を作り上げていく
温かさに沈んでいくカラダ
手を上げて叫んでいる みんな行くよ
影を引っ張って脳裏に貼り付けている

宇宙はもう真夜中
地図を見ても争いなんて記されていない
砂漠に突き刺さっているカラフルな自動車
ハイウェイを飛ばす僕らは回転する
星空に囲まれてどこまでも水中 草木のない岩場
沈む夕日がそのまま静止して
大都会の照明を見下ろしている
ライヴに集まる人々は言葉を交わさずに
カラダを震わせてレーザーに撃たれている

ゆれる国旗が飛空船にさよなら
痺れているよいつも君のすぐ横で
楽器を片手に持って散歩をするのさ
見慣れたこの僕が生まれたこのストリートを

個々が
Fin 真っ黒い中で
携わった人たちの名前が現れては消え
洗われては消えて

鼻を擦り合っている 唇を重ねる
君はどこから来たのかと見詰め合っている
今日の僕らは幸せだから
代わりに誰かが悲しみの歌を
心地よいリズムに乗せて歌っているだろう

もう進むことはできない
言葉が意味をなくすから
ただここに佇んでいる


自由詩 思い出の再生 Copyright 狩心 2018-02-01 08:56:31
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