下へ向かう
Seia


意を決して出かける度に
知らないものが増えている
街にとけのこってしまう
粉っぽくて
だまになる身体
焦りは何も生まないと
言ったその口が震えている

鍵穴をまわす
水音をきく
カレンダーをめくる
ひとつひとつの動作が
昨日のわたしをなぞっている
あるいは前世の
あるいはあなたの

ポイントカード
ありません
首から下げて
なるべく会話を減らしたい
喉の奥からでてくる
声として生まれなかった
粘着質な言葉の塊

ぽかんとしながらあるいていると
目の前に突きつけられる
あとで考えておこうと
片隅に追いやった最終問題
すこしだけいじくりまわして
かばんの底へしまった

どこかから切り取ったものを
ぺたぺたと貼り付けて進む
自分なんて最初から無い
改変に次ぐ改変
探しています
原作者

靴紐はほどけている
さっきから
気づいていたけど
紐の先が濡れていて
あまり触りたくなかった
仕方なくしゃがんでみえる景色は
いつもより空気が薄い
震えているその口に
マスクが擦れて


自由詩 下へ向かう Copyright Seia 2017-12-25 20:30:04
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